北澤豪さん(左)と社長の吉井栄伸(右)

組織運営の学び

吉井
大学では競技ダンス部に属していました。 全東北学生競技ダンス選手権大会などでの優勝経験もあります。

北澤
会社の皆さんの前で披露されたりするんですか(笑)。

吉井
ペアとなる相手がいないので、お見せできていませんし、今現在はダンスを踊れる体になっておりません(笑)。

北澤
競技ダンス部時代の経験で、今も活かされていることは何かありますか?

吉井
はいあります。 学生の競技会は学生が自ら運営していますので、会場費やポスターなど大会運営費の捻出のためにパンフレットに掲載いただく広告の営業をしていました。 当時から名刺を持って飛び込み営業していましたので、その経験は社会人になった当初はすごく活きたと思います。

当社の事業についても説明させてください。 われわれは、技術者派遣業を手掛けており、主な派遣先(顧客)は大手の機械電機メーカーなどです。 在籍技術者数は約6,000人(2023年4月現在)で、年々増えています。

事業を進める上で大切にしているのが、当社のミッション・ビジョン・バリュー(MVV)です。 このMVV実現を進めることで、グループ・パーパス実現の一翼も担います。

株式会社ビーネックステクノロジーズのMVV

Mission
「日々果たすべき使命」
「次」に挑む、機会を創り続ける。
Vision
「実現したい未来」
ひとりひとりが自分らしいキャリアを歩み、
変革の原動力となる社会に。
Value
「社会に約束する価値観」
個の尊重
可能性の追求
社会との調和

出典元: BeNEXTの理念

ミッションに「『次』に挑む、機会を創り続ける。」と掲げていますが、当社の技術者に対しては「挑む機会は、『自ら』つくってほしい、そうしたチャレンジをしてほしい」と伝えています。 また、営業部門や管理部門のメンバーに対しては、技術者の「次」のために、技術者のスキルアップ支援や、新たな就業先の確保はもちろん、「技術者同様に『自ら』挑み、成長してほしい」と要望し続けています。

また社内では、MVVが日々の業務に紐づくように様々なKPIを設定しています。 技術者の「次の機会を創る」ために施策を講じていますが、その結果として「技術者の社に対する満足度の向上」をモニタリングするなど、MVVが単なるお題目に終わらず社全体で実現していく体制を整えています。

北澤
凄いですね。 実現へ向け、施策を具体化して積極的に動いているんですね。

求められるのは社会にとっての価値

吉井
北澤さんのご活動ぶりについては書籍やWEB上の記事を拝読しています。 途上国の子供たちや、障がい者の方々がサッカーを楽しめる環境創りに力を注がれていますが、そのお考えの源泉はどこにあるのでしょうか?

北澤
もともとは、「自分自身のプレーヤーとしての専門性を高める」とか、「プレーの魅力を伝える・高める」という姿勢で、サッカーと向き合っていたと記憶しています。 しかしJリーグが発足したころから、少しずつ自分の趣向が変わってきて、「誰もがサッカーなどのスポーツを楽しめて、その環境を利用して多くの人たちの生活を豊かにしていきたい」と感じるようになりました。

吉井
「競技性の追求」は理解されやすいと思いますが、「スポーツを通じて生活を豊かに」という考え方を浸透させるのはとても難しいですよね。

北澤
確かにそうですね。 ですが、時代の変遷と共に「求められるもの」が変わってくるじゃないですか。
何に対して幸せを感じるのか。 競技であれば確かに「勝利」に対してです。 しかし、「何の制限もなく、誰とでも一緒に楽しめる」ということを、ひとりひとりが感じられることが大切なんだと考えるようになったのです。

吉井
賛同者の方は?

北澤
最初はいないですよね。「余計なところに首をつっこむな」という感じでしたから。

吉井
私も社長として社内に方針を出しますが、いかにみんなに伝えて、進む方向を揃えるのかという点がとても難しいと感じています。 北澤さんのご経験から、賛同者や理解者のつくり方や増やし方をお伺いできれば。

北澤
それはサッカーの歴史から、先人のマネージメントを見ていくとか、ターニングポイントなど変化のきっかけをみていくことでヒントを得ています。 理解してくれる人は必ずいますし、時代の流れと共に増えていきます。

吉井
様々なターニングポイントと言えば、サッカー界も激変してきましたよね。

北澤
はい、それはJリーグスタートがきっかけですね。 Jリーグ以前の有力チームは実業団(※3)でしたが、現Jリーグのチームは地域密着のクラブチーム(※4)です。 各チームは、ご存じの通り地域や社会全体に向けた活動に取り組んでいます。

※3 企業内に存在するスポーツチーム。 サッカー界では「企業チーム」「社会人サッカーチーム」と呼ばれることもある。
※4 地域の個人やスポンサー企業の支援で運営される。

吉井
「自分たちの利益に向けての活動」ではなく、「社会にとって価値がある活動」が求められるのは、まさに時代の流れですね。

気づきが自信を生む

吉井
当社では、未経験者の方に門戸を大きく開いており、顧客企業(派遣先)からの要望に応じて適した人材を配属する努力もしますが、それ以上にその方の志向やスキルにマッチした配属が実現するよう努力しています。

未経験の方でもチャレンジできるような配属先をより多く獲得していくということは、従前からの努力が実っています。 一方で、配属後のサポートにはまだまだ課題があります。 配属後に受講できる1600以上のeラーニング、また年2回のキャリアブラッシュアップと呼んでいる研修などもありますが、それだけでスキルアップが出来るかというとサポートが足りません。 最終的には一人一人の姿勢が大切ではありますが、もっと後押しできるような育成に力を入れたいと考えています。 これまでのご経験から「育成」のポイントについてアドバイスいただけますか?

北澤
障がい者サッカーの環境整備を進めていますが、彼らはこれまで社会に認められることが少なかった。 しかし、私が会長を務める日本障がい者サッカー連盟が一緒に歩む中で、①彼らの強みを見出して、②自信を持たせ、③活躍できる場を設けています。
彼らの強みをエッセンスにした研修プログラムを作り、企業や教育機関に提供。 そこにプログラム講師として彼らが参加することで「活躍できる場」としています。

吉井
本人だけでは「自分の強み」に気がつけないですよね。

北澤
そうなんです。 例えば視覚障がいのプレーヤーは「見えない」中でも、コミュニケーションを図り、信頼関係を築き、チームとしての親密感を高められるという「強み」があるので、それを活かした研修プログラムを作りました。
「見える」ことがあたりまえのわれわれが、アイマスク着用のブラインド状態で研修プログラムを受講することで、今まで以上のコミュニケーションの円滑化、チームワークの活性化など、よりよいチームビルディングを学べるようになっています。

視覚障がいのプレーヤーらは、自分たちの強みを認識し、研修プログラム制作に携わり、講師として参加し、企業などに気づきを提供する。

自分たちの社会におけるポジションを掴むことで、今まで以上に自ら社会に出ていくようになります。 更に、その組織に属する誇りも感じられるようになり「ここに居て良かった」と思えるようなります。 となると、誰かが作った環境にはまっているだけでなく、自ら積極的に動き出すようになるんです。

吉井
当社の事業も同じように思えます。 与えられた仕事をこなすだけでなく、自ら「次」を切り開いてほしいと考えているので。

北澤
御社のミッション・ビジョンを見ていて、われわれの考え方ととても似ていると思いました。 育成のポイントは「気づかせる・自信を持たせる」という点ではないでしょうか。

この組織に居て良かった

吉井
当社グループを技術者派遣数で業界1位にしたいと私は考えています。 なぜ1位を目指すかというと、業界内で良い影響力を持ち、自分たちが目指す世界観を実現していきたいためです。
人材派遣に関する法律改正が検討される際も、業界1位であれば意見聴取で各機関からお声がかかるではないかと思うんですよね。 それは一例ですが、もっとよい業界にしていけるような力を、今以上に持ちたいと思っています。

北澤
1位を獲ることも大切ですが、「この会社に属している喜びを感じられる」ことがより重要だと思います。 1位を走っていると「強いからこのチームに居たい、1位だから加わる」と、あまり考えない人が増えてしまうケースがあって、ズルズルと順位をさげていくことがサッカー界でも多いです。
「自分たちがこのポジションを創り出している、自分たちの行動が影響力を発揮している」と全員で思えることがポイントです。

吉井
ありがとうございます。 確かに「1位を獲る」ということを前面に打ち出さなくとも、MVVを着実に実現していくことが重要ですね。

北澤
御社のMVVが実現していけば、結果は必ずついてきますよ。 「この会社に属している良さ」を多くの方が感じられるようになれるといいですね。 その「良さ」を感じるためには、ひとりひとりが「自分の行動が成果につながった」と気づけることが大事です。 しかし、多くの方は「自分自身が何らかの良い影響力を発揮している」事に気がついていないんです。 日常的に当たり前のことになっているから。 その「影響力の可視化」をしてあげることで、皆さんの自信につながります。

吉井
影響力の可視化とは?

北澤
日常の中で当たり前になっていることも「あなたはわれわれの組織の中で、この行動で、こんな良い影響力を与えてくれたよね」と具体的に伝え、気づかせることです。 われわれの障がい者サッカー連盟でも、プレーヤーらに対して「障がいがあるのに頑張っているよね」ではなく、視点を変えれば「こんな強みがある」という部分を可視化しているだけです。

吉井
それは確かに重要ですよね。 強みや貢献の可視化をすると、誰しも嬉しいですよね。

北澤
技術者なら顧客からの評価、営業社員なら成果数値などで評価されることが多いとは思いますが、強みや貢献について言われると「この組織に居て良かった」と思えるはずです。

吉井
北澤さんのパーパスサポーター就任について、当社内でも注目度や期待度がとても高いです(笑)。 いただいたアドバイスを社内でも共有し、当社MVVとグループ・パーパスを実現することで、「ひとりひとりの可能性をひらく社会」創りを成し遂げていきます。